残念なことですが犬は飼い主よりも先に逝きます。少しづつ老いていくことで、その時が近づいていることを知らせてくれているのです。
老化と向き合って少しずつケアを続けていく必要があります。今回はそんな年老いた犬との暮らしと気をつけるべき病気についてご紹介します。
犬の年齢と寿命
犬は人よりも先に年をとります。
赤ちゃんが生まれたときに飼い始めた犬は、その子どもが成人する前に年をとり逝ってしまいます。
悲しいことですがこれは確かなことです。
1.犬の寿命と人の寿命
犬と人の寿命比較する方法はいくつかあります。
小型犬、中型犬、大型犬の違いを考慮すればその数もっと増えます。
よく知られているのが1歳を18歳として、その後は1年ごとに4歳加算していくやり方です。
犬の年齢 | 人の年齢 |
1歳 | 18歳 |
2歳 | 22歳 |
4歳 | 30歳 |
6歳 | 38歳 |
8歳 | 46歳 |
10歳 | 54歳 |
12歳 | 62歳 |
14歳 | 70歳 |
16歳 | 78歳 |
18歳 | 86歳 |
20歳 | 94歳 |
犬の年齢はわかりにくいものです。
老化現象が見た目にもハッキリと現れるのは、犬種にもよりますが12歳を越えたあたりからです。
でも、犬の老化はシニア入りする7〜8歳の頃から加速していきます。
年をとれば必然的にやってくる病気があります。
そういった類いの病気はかかってしまったら完治ができないものばかりですが、少しでも元気で長生きしてもらうために飼い主ができることはたくさんあります。
2.老犬と呼ばれるのは何歳頃から?
犬種によって数年の開きがありますが、人間でいえば40代の後半の7〜8歳からがシニア、12歳を越えるとシルバー世代といえます。
老犬……うちの犬はいつからそう呼ばれるの?
老犬の病気と対処法
犬に限らず動物の年齢は見かけではよくわかりません。
いくつになっても愛くるしい表情をしているため1〜2歳の頃からほとんど変わりがないように見えます。
飼い主は「よその子はともかく、うちの子はいくつになっても老けない」と思いがちですが、体の中では確実に老いが進んでいます。
年齢を重ねるに従って、「目がかすむ」「体の節々が痛い」「お腹の調子がすぐにおかしくなる」のは犬も同じです。
それではここからは、年を取った犬が気をつけるべき病気をご紹介していきます。
1.白内障
白内障は人間がかかるのと同じく、眼球の水晶体が白濁していく病気です。
同じ病気ですから治療法も同じで、手術によって水晶体を人工のものに取り替える治療を行います。
専門医にかかれば、白内障の手術自体は難しいものではありません。
手術費用は検査も入れて30万円以上かかると考えてください。
「お金の問題じゃない」という方がいると思います。
しかし、高齢犬にとって全身麻酔による手術は体に大きな負担を強いることになります。
聴覚と臭覚に優れた犬は、生活する上で視覚に頼っている部分が人間よりもずっと少ないのです。
徐々に視力を失っていく白内障であれば、犬自身はどれほど不自由を感じていません。
眼の濁りがなければ、白内障で視力が弱っていることに、飼い主でも気がつかないでしょう。
無理のない治療として目薬を使って進行を遅らせることもできます。
年齢によっては手術によるリスクの方が大きいことを覚えておいてください。
2.関節障害
関節障害による関節の痛みの主な原因は、クッションである軟骨がすり減ってしまうことから起こります。
これも年をとれば致し方ないことです。
ただし、犬はに痛みに対して鈍感なので痛がるようになるのは、かなり症状が進んでからです。
そうなってしまったら鎮痛剤を定期的に使っていくしかありません。
鎮痛剤は効果的ですが副作用を伴います。
愛犬の歩き方がおかしい、腰がぐらつくなどの症状は関節に由来していることが多いので、そういった素振りがみえたら早めに医師に相談しましょう。
シニア(7・8歳)に入る頃から関節を補強するサプリメントの使用を考えるのもいいと思います。
痛みがあるようでも歩ける場合は、散歩を欠かさないでください。辛そうなときは歩行補助器具を使って連れ出しましょう。散歩できないストレスの方が愛犬には負担になります。
犬の関節の病気の3大原因!サプリメントで関節ケア
3.歯周病
歯周病も老化現象です。犬用のハミガキやガムなどで若い頃からケアしていれば進行を遅らせることはできます。
しかし、歯茎が弱り、歯が抜けてくるのを完全に止めることは出来ません。
犬の歯周病の3大原因!3つの対処法とは?
歯が弱くなってきたことを気にして、ドライフードを半生タイプ、缶詰などの柔らかいものに変えるのは悪いことではありません。
ただ、ウエットタイプの製品の中にはおすすめできないものも混ざっています。
水分を多く含んでいる状態を保つために“保湿剤”が多用されていたり、保存のためにドライとは比べものにならないほどの防腐剤を使っているものもあります。
増粘剤や不必要な着色剤、香料の使用も問題です。
柔らかい食事が必要になったら手作りをすることも考えてください。
そんな手間はかけられない、と思われるかもしれませんが、ご自身や家族食事を作るとき、味をつけない下ごしらえの段階でワンちゃん用に取り分ければいいのです。
ただし、犬が中毒を起こす玉ネギなどのネギ類を与えてはいけません。
量が足りないときは、タンパク質が豊富なオカラや、いつものドッグフードを水やダシでふやかせて増量してあげましょう。
4.消化器官の老化
歯と同時に消化器官も弱ってきます。食が細くなったり、いくら食べても痩せてしまうようなことが起こります。
かなりの高齢になって食事を食べなくなってきたら、普段は与えていない「好きなもの」を補助的に食べさせていいのではないでしょうか。
犬は人が食べているものを欲しがります。
食べたいものをゴハンに混ぜてやれば食べてくれるかもしれません。
糖分や塩分があって、ペットにとって体に悪いものでも大量でなければ、体を維持したり活動するためのエネルギー源になります。
ただし、チョコレートなど中毒を起こす可能性のあるものは絶対に与えてはいけません。
いくら食べても、すぐに排泄してしまうようになるのは、体が食べ物を消化吸収できなくなってきているからです。
消化しやすくて、タンパク質、カロリー共に高めの食事を考えてください。
胃腸が弱ってくると、トイレのタイミングもずれてきます。
散歩時がトイレタイム習慣になっているワンちゃんは特に気をつけてください。
また家の中で粗相をしても決して叱らないこと。
怒られるのが嫌で我慢するようになれば、腎臓や腸への負担が大きくなって、重い病気を引きおこす原因になります。
5.痴呆症
犬の痴呆の顕著な症状は「徘徊」と「夜鳴き」です。
散歩の時間になれば玄関に向かっていた犬が、見当違いの部屋に向かっていったり、部屋の角にはまって動けなくなっていたり、同じ所をグルグルグルまわってじっとしていられないようなことがあれば認知症による「徘徊」が始まっていると考えて間違いありません。
徘徊が始まったら、テーブルなどの角に頭をぶつけたり、転んでケガをしない対策を施してください。
家具の角にはクッションをつけたり、柔らかい素材でできた緩衝材などで囲ってください。
床には滑りにくい素材を敷きましょう。
一枚物の絨毯だと粗相したときの始末が大変ですから、パーツごとにばらせるジョイントマットがおすすめです。
段差にはスロープを設置しましょう。
そして認知症で一番困るのは「夜鳴き」です。
夜はぐっすり眠っていた子が、ある日突然、ひとりになると悲しげに遠吠えをはじめます。
夜でなくても飼い主の姿がちょっとでも見えないと吠え出すようになります。
集合住宅や住宅密集地だと近所への配慮もあるので大きな問題です。
夜鳴き対策はこれ!といったものがありません。
安眠できるよう昼間はなるべくたくさんお日さまにあててください。
自律神経が刺激されて昼夜の区別をハッキリとつけやすくなる効果が期待できます。
ひとりになると鳴いてしまうなら、一緒に寝てあげてください。
ゲージを枕元に持ってくるのもいいでしょう。
犬の夜泣きの5大原因!5つの対処方法の解説
6.暑さ寒さへの対策
年をとると急激な温度変化が体に大きな負担をかけるようになります。
特に夏の部屋の中と、冬の家から外に出るときに注意が必要です。
夏場はエアコンを上手に使って熱中症を予防しましょう。
犬の熱中症に注意!熱中症の症状や対策、治療について
また頻繁にブラッシングして毛を梳いてあげてください。
たまに見かける「毛刈り」は、運動できない犬にはある程度効果がありますが、普通に散歩できる犬にとっては迷惑な話です。
なぜなら動物の毛は断熱材です。
体温を保つと共に外側からの熱や紫外線も遮断します。
またものにぶつかったり転倒したときに体を保護する大切な役割もあります。
冬でも夏でも毛は必要なのです。
冬の寒いときの外出には上着を着せてください。
いきなりの温度変化で脳卒中を起こしたり、寒さで心臓が苦しくなって、急に倒れるのは冬場が多いようです。
サプリメントの効果
眼、歯、関節部をいつまでも健康に、という効果をうたったサプリメントがあれこれと発売されています。
サプリメントは飲んですぐに効果が出るものではありません。
サプリメントを使うなら症状が現れる前、シニアの段階から常用しましょう。
医師から薬をもらうときはサプリを使用していることを必ず知らせておいてください。
ちなみに急に効果があるようなものは危険なものですから気をつけてください。
犬の関節の病気の3大原因!サプリメントで関節ケア
辛いかもしれないけれど……安楽死の選択
安楽死。
これを聞いていい気持ちのする人はいないと思います。
しかし、癌などに冒されて意識を失い、痛がっている様子だけがハッキリと見て取れるようになったときはどうでしょう?
犬は痛みに鈍感です。
見た目にも痛がるのがわかる時は、相当な痛みに苦しんでいるときなのです。
動物病院で行われる安楽死には麻酔薬が使用されます。眠るように命を終えることができます。
時には考えなくてはいけない選択なのかもしれません。
■まとめ_老犬の最期を看取ること
犬は飼い主よりも先に逝きます。
これは避けることができないことです。
逆に愛犬を残して飼い主が死んでしまったら残された子はどうなるでしょうか?
仮に自分の家族が見てくれるとしても、受け渡された飼い主が愛犬の最期を看取ることになるだけです。
飼い主が変わるだけで犬が先に逝くことに変わりはありません。
犬を飼った以上は、必ずその最期を看取る、それが飼い主の責任です。
年をとった犬を「生かしておいても可哀想だから」と、動物愛護センターに持ち込む人がいます。
言語道断です。
愛犬(愛されていると犬は思っていたはず)だった犬は、大好きな家族と離されて殺処分までの不安な数日を過ごし、まったく知らない人に殺されます。
苦しみながら死ぬ、窒息死をいまだに採用しているセンターもあります。
犬を飼う=最後まで看取ること。
人間でも家族に看取られて逝きたいものです。
そして最後には「あなたたちといて幸せだった」とひと言残したいはず、犬だって同じです。
「ありがとう。あなたがいてくれて幸せだった」の言葉で送ってあげましょう。
老化はゆっくりとしたお別れの合図なのです。
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