子どもが生まれてすぐに犬を飼い始めれば、その子が小学校を卒業する頃にその犬は老犬と呼ばれる歳になっています。
犬は人よりも早く年をとります。いまは若い犬でも老いは必ずやってきます。
ですから、愛犬の老いとどう向き合えばいいのかを知っておくことはとても大切なんです。
今回はそんな犬の老いと老犬についてご紹介します。
老犬とは
人も年をとれば「老人」と呼ばれるのと同じで、年を取った犬が「老犬」です。
ただ犬は見かけだけで年齢を判断するのは人よりもずっと難しいです。
外見だけ見ていると年をとっているようには見えません。
飼い主でも「うちの子はいつまでたっても若いときと変わらず元気」と思い込みがちです。
でも、老いは確実に進行しています。
犬もシニア、シルバーと確実に年を重ねていくのです。
愛犬の老化現象が目に見える前に、客観的に見て「老犬」と呼ばれるのはいつ頃からなのか知っておきましょう。
1.犬の年齢を人に例えると
犬の年齢を人に例えるやり方は何通りかあります。
小型犬と大型犬では平均寿命が違います。
犬種 | 平均寿命 |
---|---|
超小型犬 | 15.01歳 |
小型犬 | 14.09歳 |
中型犬 | 13.73歳 |
大型犬 | 13.73歳 |
(平成28年 全国犬猫飼育実態調査)
正確を期すならその点も考慮するべきでしょうが、一般的な計算法でも愛犬が人間ならいくつくらいなのか見当をつけることが出来ます。
犬の年齢 | 人の年齢 |
1歳 | 18歳 |
2歳 | 22歳 |
4歳 | 30歳 |
6歳 | 38歳 |
8歳 | 46歳 |
10歳 | 54歳 |
12歳 | 62歳 |
14歳 | 70歳 |
16歳 | 78歳 |
18歳 | 86歳 |
20歳 | 94歳 |
これは1歳を18歳として、その後は1年ごとに4歳加算していくやり方です。
2.何歳から「老犬」?
人の年齢で考えると、犬がシニアの仲間入りをするのが40代半ばを過ぎた7歳頃から。
老犬と呼ばれるのは定年を迎える65歳より後と考えると12歳くらいからです。
大型犬の場合は老化が早く進むので10歳前後で老犬圏内に入っていると考えていいでしょう。
いずれの犬種でも、10歳を越える頃から体の衰えが目に見えるようになってきます。
3.飼い主の知っておきたいこと
どんなに愛らしい仔犬でも、1〜2年で成犬になり、やがてシニア、そして老犬になります。
人間の子どもの成長に比べると、過ぎてしまえばあっという間に感じるかもしれません。
わが家の犬は老けない、なんてことはありません。
老いへの対処は誰にでも必要です。
老犬と暮らすのに大切なポイントは、以下の4つを知っておくことです。
- 老犬のとりがちな行動
- 介護に必要な知識
- 老犬のかかりやすい病気について
- 飼い主のできることについて
老犬のとりがちな行動
やっぱりうちの子は元気だから「老犬」とか年齢でいわれても納得がいかない、という方も多いと思います。
でも老犬になると、個体差はありますが以下のような行動が見られるようになります。
愛犬の行動を観察してみてください。
1.食事をとらなくなる
年を重ねると歯周病で歯や歯茎が弱り、硬い物を咀嚼できなくなります。
また、胃腸も弱ってきますので消化吸収力も落ち、食が細くなります。
2.逆に食事を要求する
消化吸収力がなくなってくると、いくら食べても栄養にならず、常に空腹を感じて食べる量が増える子もいます。
ゴハンをあげてもすぐに要求してきたり、食べてもすぐに排泄してしまうのでトイレの回数も増えます。
3.つまづき、転倒が増える
今までは平気だった段差を踏み外したり、フローリングの床で転倒しやすくなります。
白内障による視力の低下が原因でものにぶつかるようになることも増えます。
ちょっと体を動かすだけで気温が低い日でもゼイゼイと苦しげな呼吸をするようにもなります。
4.うろうろと徘徊する
散歩タイムには玄関を飛び出していた子が、まったく見当違いの方に向かっていったり、家具の隙間に顔を突っ込んで後ずさりができず動けなくなってしまうことがあります。
同じ所をグルグルを回り続けるのも認知症による徘徊の兆候です。
5.吠えることが多くなる
夜はおとなしく眠っていた子が夜中に起きて遠吠えをしたり、昼間でもひとりになると吠えだします。
鳴き声を出さずに、ひとりにするとブルブルと震えだしてしまう子もいます。
6.トイレがうまくいかない
トイレには決まった時間、決まった場所があったのに、時間がずれたり、間に合わなくてトイレ以外の場所で粗相することがままあります。
これらの症状は老化の始まりです。
老犬介護の心得
愛犬に老化の兆候が見られたら、飼い主は介護が始まる覚悟をしましょう。
1.食事の与え方を見直す
食が細くなったら内容を見直します。
歯が弱っているなら柔らかいものを、胃腸に問題があるなら消化吸収のいいゴハンに変えてください。
ドライフードから半生タイプや缶詰のウエットタイプに変えるときは、原材料を確認することが必要です。
保存や見かけを重視して添加物まみれのものや、カロリーを落とすために単純に穀物の配合量を増やしているだけの製品があります。
食を改善するつもりが改悪になってしまうことのないよう気をつけてください。
2.散歩のサポート
犬がスムーズに歩けなくなる主な原因は関節障害です。
関節障害は骨の接合部のクッションである軟骨がすり減ることで起こります。
老犬になるとすり減ってしまった軟骨を再生することはできません。
歩行がきついようになってきたら歩行補助器具を使って散歩に連れ出しましょう。
歩けなくなってもカートなどに乗せて外の空気に触れさせることが大切です。
犬は関節の痛みよりも散歩に行けないことにストレスを感じます。
明らかに痛がって歩くのを嫌がるようなら鎮痛剤を処方してもらいましょう。
鎮痛剤には副作用がありますので医師の指示で使ってください。
家の中でも、段差にはスロープを設置したり、フローリングの床には分割して洗うことのできるジョイントマットなど滑りにくい素材を敷いてあげてください。
夏、日中の散歩を避けるのは老犬に限ったことではありません。室内では熱中症を予防しましょう。
犬の熱中症に注意!熱中症の症状や対策、治療について
3.徘徊が始まったら
愛犬に徘徊が始まったら一番注意して欲しいのは脱走です。
認知症が始まっても足腰の丈夫な子もいます。
油断している間に脱走すると方向感覚が鈍っていますから、ひとりで帰ってくることができません。
家の中での転倒にも気をつけてください。
フローリングの床の滑り止め、家具の角などにクッションを取り付けましょう。
4.夜鳴きの対策
ホルモンバランスが少しでも正常になるよう、日中はお日さまの元でできるだけ相手をしてあげます。
ひとりでいられない子はゲージを枕元に持ってくるか、一緒に寝てあげることも必要です。
昼間の鳴き声が止まず、どうしてもひとりにしなくてはいけないことが多いときは医師に相談してください。
認知症を緩和する治療も進んできています。
5.眼に関するトラブル
白内障が進むと視力が低下します。
白内障は眼球の水晶体が濁る病気ですので見た目でわかります。
白内障は高齢犬にはとくに珍しくない病気です。
視力の低下と聞くとビックリしてしまいますが、犬はそれほど気にしていません。
犬は生活していく上で視力に頼る部分がそれほど大きくないのです。
元々、鋭い嗅覚と聴覚を使って状況を判断することが多いため、眼が白濁しなかったら視力が弱っていることに気がつかないかもしれません。
水晶体を人工のものに変えることで直すことができますが、手術ために行う全身麻酔による体への影響の方が心配です。
6.できもの、腫瘍
高齢になるに従って、腫れ物やできものが増えてきます。
活動に支障のない場所のものは悪性でない限りは放っておいても大丈夫です。
また、見栄えが悪いからという理由だけで切除するのは考えものです。
やはり全身麻酔を行うことになりますから、腫瘍と麻酔とどちらが犬にとって負担になるか医師と相談してみましょう。
7.寝たきりになってしまったら
寝たきりになっても、短い間でもいいので外に連れ出してあげてください。
小型犬なら抱っこして近所をひとまわりでも構いません。
大型犬もカートや専用のキャリアを使って散歩に出かけましょう。
床ずれが悪化すると骨まで露出してしまうことがあるので気をつけてください。
最近は床ずれ防止グッズが出回っているので、用途に合わせて活用しましょう。
老いにそなえる
犬の成長は本当に早いです。
調子が悪くなってからあわてないで済むようできこるとは早めに対応しておきましょう。
1.ペット保険
ペットは何かと病院のお世話になります。
そしてその医療費は全額自己負担なので薬ひとつとっても人間とは一桁違います。
ペットを飼ったら早い機会にペット保険に加入しておくと安心です。
10歳以上の高齢犬でも加入できる保険も増えていますが、やはり掛け金が高くなります。
加入の時は、通院・入院・手術すべてをカバーするタイプを選びましょう。
2.サプリメント
眼の健康ため、関節を守る、胃腸を丈夫に保つなど様々なサプリメントが販売されています。
サプリメントは飲ませてすぐに効果が現れるものではありません。
その病気にならないよう、症状が出るのを少しでも遅らせるために服用するものです。
必要なら早めに服用を始めるといいでしょう。
サプリメントは組み合わせによって副作用を引き起こすものがあります。
あちこち気になるからと色々な種類を一度に飲ませてはいけません。
すでに常用しているものがあるなら、一緒に飲んで大丈夫か製造元に問い合わせてください。
まとめ_愛犬の最後を看取る
なかなか年をとったようには見えない犬ですが、その兆候が見えると老いは一気に進みます。
昨日まで歩いてた愛犬が朝になったら立ち上がれない、そんなことも珍しくありません。
仔犬の頃には考えもしなかった、日々元気がなくなっていく姿を見るのは辛いかもしれません。
でも、それは飼い主がお別れの瞬間を覚悟できるよう、愛犬があなたに残す優しい時間でもあるのです。
愛犬の老いから眼そそらさず向きあってください。
少しでも元気に過ごせる時間が長くなるよう、そして安らかな最後を迎えることができるよう手を尽くせるのは飼い主しかいません。
これは、今、老犬と暮らしている人だけでなく、今日から犬を飼い始めた人にとってもいずれやってくる大切な問題です。