ジャーマン・ピンシャーは日本では珍しい犬種ですがその歴史は古く、ミニチュア・ピンシャーとドーベルマンの基礎になったと犬種いわれています。家庭犬や番犬としても優秀で、優雅さと強さを持ち合わせています。
今回はそんなジャーマン・ピンシャーの性格と飼い方、しつけのコツについて紹介します。
ジャーマン・ピンシャーとは
1. ジャーマン・ピンシャーの紹介
ジャーマン・ピンシャーの原産地は「ドイツ」です。
ピンとたった耳は断耳された耳で、本来は垂れた耳をしています。また、本来は長い尾を持っていますが、短く断尾されている場合もあります。筋肉質の引き締まった体つきと小ぶりの顔が特徴です。
つややかなスムースコートの被毛も特徴の一つです。
血統書を発行しているジャパンケネルクラブの分類によると、グループ2(使役犬)に属する中型犬です。
2. 簡潔な歴史
ジャーマン・ピンシャーの歴史は非常に古く、1880年にはすでにドイツで犬種として登録されており、ネズミ駆除や家畜の番などを行う使役犬として広く活躍してきました。
しかし、ジャーマン・ピンシャーは第二次大戦後に一度絶滅しかけます。
そのため、1958年に東ドイツで生き残った1頭のジャーマンピンシャーと、大きいサイズのミニチュア・ピンシャー4頭により、なんとか犬種を保つことができました。現在のジャーマンピンシャーは全てその5頭の子孫に当たります。
3.ミニチュア・ピンシャー、ドーベルマンとの関係
ジャーマン・ピンシャーに似ている犬種で「ミニチュア・ピンシャー」と「ドーベルマン」がいますが、どちらもジャーマンピンシャーの子孫犬にあたります。
小さな巣穴にも入れるよう小型犬として品種改良されたのがミニチュア・ピンシャーであり、警護犬として大きめに品種改良されたのがドーベルマンです。
ミニチュア・ピンシャー
ドーベルマン
4.スタンダード・シュナウザーとの関係
ジャーマン・ピンシャーは同じドイツ原産の「スタンダード・シュナウザー」と兄弟関係にあり、祖先犬は「ラフ・コーデット・ピンシャー」と呼ばれてた犬種です。
ただし、ジャーマン・ピンシャーがスムース・ヘアー(滑毛)なのに対し、スタンダードシュナウザーはややカールした長めのラフ・ヘアーをしています。
スタンダード・シュナウザー
5.名前のルーツ
ジャーマン・ピンシャーの名前のルーツですが、ジャーマンは文字どおり原産地のドイツから。「ピンシャーは英語の「pinch」やフランス語の「pincer」といった「つまむ・つねる」という意味の言葉が語源であるとされています。
単に「ピンシャー」とも呼ばれ、「スタンダードピンシャー」の別名もあります。また、英語では「German Pinscher」と表記します。
6.成犬の平均体高・平均体重
ジャパンケンネルクラブによればジャーマン・ピンシャーの成犬の平均体高は45〜50cmとされています。※体高とは犬の肩までの高さです。
- 平均体高:45〜50cm
- 平均体重:14〜20kg
150cmの女性との比較
7.日本で飼育されている数
日本で飼育されているジャーマン・ピンシャーの飼育数ですが、ジャパンケネルクラブの2017年の犬種別犬籍登録頭数を調べてみるとわずか15頭です。
2017年犬種別犬籍登録頭数(ジャパンケネルクラブ) 犬全体の登録数が292,906頭ですから、全ての犬種に占めるジャーマン・ピンシャーの割合は約0.005%と大変稀少な犬種です。ちなみに、犬種別でみても100位にランクしており、その希少性がよくわります。
8.飼いやすさの目安
ジャーマン・ピンシャーの飼いやすさの目安を紹介します。
社会性・協調性がある | ★★★☆☆3 |
健康管理がしやすい | ★★★★☆4 |
初心者向き | ★★★☆☆2 |
噛み癖がつきにくい | ★★★☆☆4 |
訓練されるのが好き | ★★★★☆3 |
物覚えがいい | ★★★★☆4 |
ジャーマン・ピンシャーの毛色のタイプ
ジャーマン・ピンシャーは短毛のスムースヘアで、短毛で密集しており、滑らかで体にピッタリと生えていて光沢があります。
毛色のタイプはジャパンケネルクラブでは大まかに2つに分けられています。
1.単色
ディアー・レッド
ディアー・レッドの毛色のタイプは、赤っぽい鹿のような色のジャーマン・ピンシャーです。
レディッシュ・ブラウン
レディッシュ・ブラウンの毛色のタイプは、赤みがかった茶色のジャーマン・ピンシャーです。
ダーク・レッド・ブラウン
ダーク・レッド・ブラウンの毛色のタイプは、非常に濃いこげ茶色のジャーマン・ピンシャーです。
2.ブラック&タン
ブラック&タンの毛色のタイプは、漆黒にレッドもしくはブラウンのマーキングがあります。目の上、喉の下、足などに入ったマーキングは、濃くはっきりとしているのが好ましいとされています。
小型のドーベルマンのようにも見えます。
ジャーマンピンシャーの値段
ジャーマン・ピンシャーの値段ですが、日本では希少な犬種ということもあり、相場的には30~50万円と他の犬に比べて高額です。しかも、ペットショップでは見つけることは難しいためブリーダーからの購入になるでしょう。
国内で手にはいらない場合は海外から輸入ということになりますが、海外からの空輸になるとさらに時間とお金がかかることになります。
ジャーマンピンシャーの価格は血統・見た目などで変わり、親がチャンピオン犬で直子(ちょくし)になるといっきにはね上がります。また、見た目でいえば、タンと言われる模様の入り方が美しいと、より高額になる傾向があります。
ちなみにミニチュア・ピンシャーであれば10〜15万円ほどで購入可能です。
その他にかかる初期費用
- 混合ワクチン……16,000円
- 狂犬病予防接種… 3,500円
- 健康診断………… 3,000円
- 畜犬登録………… 3,000円
- 飼育グッズ………30,000円
ジャーマン・ピンシャーの性格の4つの特徴
1. 陽気で活発
ジャーマン・ピンシャーは、陽気で活発な性格です。犬の中でもとてもエネルギッシュな種類であり、遊び好きで面白いことを見つけると休むことも忘れて動き回ります。家族への愛情が強く忠実なので、家庭犬としても理想的です。
2.勇敢
ジャーマン・ピンシャーは小害獣駆除を目的として作出された歴史もあり、狩猟に適した性格です。特に勇敢な性質があり、何にでも果敢に挑戦します。
また、狩猟を行ってきた性質から少々気性の荒く攻撃性が高いところもあります。見知らぬ侵入者にも吠えかかり噛みつこうとするなど、番犬としても役に立つ性格です。
3. 聡明
ジャーマン・ピンシャーは、ドーベルマンやミニチュア・ピンシャーのもとになった犬種であることからも分かるように、非常に賢く訓練性が高い犬種です。自ら考えて計画をし、飼い主の気持ちを読み取ろうとします。
そのため、しっかりとしつけを行い社会性を身につけさせれば、攻撃性を抑えることも可能です。
飼い主がボスであることを理解させ、我慢を覚えさせてください。トレーニングをしっかり行うことで、室内飼いでも良い関係を気付くことができるでしょう。
4. 忍耐強い
ジャーマン・ピンシャーは、狩猟犬の歴史から忍耐強く集中力がある犬種です。また警戒心はありますが、物怖じせず堂々としており、しつけ次第で番犬として最適です。
オスとメスでの性格の違い
1.オス
ジャーマン・ピンシャーのオスは、メスに比べて甘えん坊で愛情深い傾向があります。また、オスのほうが「おっとり」していると言われています。ただし、オスは縄張り意識が強くオシッコを部屋中に引っかけてしまう場合があります。トイレのしつけをしっかりと行うようにしましょう。
2.メス
ジャーマン・ピンシャーのメスは、オスに比べて自立していますが支配的な傾向があります。また、メスのほうが「やんちゃ」だと言われています。特に生理のタイミングでは、神経質になってしまうことがあるため、接し方に注意が必要です。
ジャーマン・ピンシャーを飼うのに向いている人
1.活発で運動好きな人
ジャーマン・ピンシャーは運動量が多い犬種なので、体力があって運動好きな人には最適です。休みの日には一緒にドッグスポーツを楽しみたい人がとくに向いていますし、しっかりと運動を行わせるとジャーマンピンシャー自身もとても喜びます。
もし、散歩から帰ってきても部屋の中でうろうろと歩き回るような場合は、運動量が足りていない可能性がありますので、もっと運動量を増やすようにしましょう。
2.リーダーシップがとれる人
ジャーマン・ピンシャーの性格上、強いリーダーシップがとれる人が飼うことに向いています。主従関係をうまくきずく必要があるので、受け身の傾向がある飼い主さんには難しいでしょう。
飼いやすい犬種になりますが、しつけをしっかりと行わないと傍若無人な性格に育ってしまいます。特に勇敢な性格が災いして、他人への攻撃性が強くなってしまうため、社会性を身につけられるしつけを、意識して行うようにしてください。
3. 小さな子供がいない人
ジャーマン・ピンシャーは子供との相性は悪くありませんが、小学校低学年以下のお子様がいる家庭では検討すべきです。子供が雑に扱うと、咬みつきや飛びつきなどの問題行動を起こす可能性があります。
ジャーマン・ピンシャーのしつけの4つのポイント
1主導権を握る
ジャーマン・ピンシャーは物覚えが良く賢い犬種ですが、本来猟犬ですので他の動物に対して支配的な傾向があります。そのため飼い主さんは「ボス」としてしっかりと主導権を握り、しつけには必ず一貫性を持たせるようにしましょう。
特に気をつけたいのが家族によって対応がかわることです。そうなると犬が混乱してしまうので飼う前に家族でしっかりルールを決めておいてください。
2.噛み癖・吠え癖
ジャーマン・ピンシャーは害獣駆除を目的として作出された歴史もあり、噛み癖・吠え癖が出てしまう場合があります。
特に子犬の時にその傾向が強いのですが、子犬の時であれば、しつけにより直すことは容易です。噛んだり、無駄吠えをした場合には、しっかりと目を見てダメだと教えるようにしてください。
また縄張り意識が強いのでそれが原因で吠えることもあります。やはり早くから対策を行い、吠えるのを止めたら正しいタイミングで褒めるというしつけを繰り返し行っていきましょう。
3.我慢を覚えさせる
ジャーマン・ピンシャーは遊び好きな性格を持っており、色々なことに興味を引かれてワガママに遊んでしまうことがあります。甘やかさずに「ハウス」や「待て」などを覚えさせ、飼い主の命令を聞くようにさせましょう。
4. 社会化
ジャーマン・ピンシャーには、社会化の訓練が重要です。環境に慣れながら相手との関係性を学んでいくので、それが不足すると極端に警戒してしまう可能性があります。社会性を身につけることができれば問題行動が少なくなります。
ジャーマン・ピンシャーの飼い方で注意すべき3点
1. 運動
ジャーマン・ピンシャーはかなりの運動量を必要としますので、散歩は毎日2回、それぞれ1時間以上が好ましいです。その他にも週に1度くらいはドッグランなどで遊ばせないと、退屈して欲求不満になることがあります。知能と体力を組み合わせたドッグスポーツに適しています。
2. 他の動物に注意
ジャーマン・ピンシャーは他の動物に対して支配的になる傾向があります。
もともとネズミなどの駆除をしていた犬種であるため、本能的に小さな猫や犬を追いかけて仕留めてしまう危険があります。
特にハムスターなどのげっ歯類を一緒に飼育したり、近づけることのないよう注意してください。
3.寒さに弱い
ジャーマン・ピンシャーは短毛で脂肪が少ないため寒さには極端に弱い犬です。日本の寒さはこの犬種には少し厳しいため、必ず暖かい室内で飼育してください。
冬に散歩するときには、寒さ対策として犬用の洋服を着せてあげると良いでしょう。
ジャーマン・ピンシャーの平均寿命
ジャーマン・ピンシャーの平均寿命は12〜14年くらいです。
しかし、あくまでも平均寿命ですので、健康管理をしっかりと行って愛情深く接していけばもっと長く生きることも可能でしょう。
参考までに中型犬の平均寿命ですが、だいたい13歳くらいです。
病気や普段の食事(ドッグフード)に気をつけてることで、寿命は長くなります。
人間との年齢比較表
ピンシャー | 人間 | |
---|---|---|
新生児期 | 1ヶ月 | 1歳 |
社会化期 | 3ヶ月 | 5歳 |
6ヶ月 | 9歳 | |
成長期 | 9ヶ月 | 13歳 |
1歳 | 15歳 | |
成犬期 | 2歳 | 23歳 |
4歳 | 33歳 | |
6歳 | 43歳 | |
8歳 | 53歳 | |
シニア期 | 10歳 | 63歳 |
12歳 | 73歳 | |
14歳 | 83歳 | |
16歳 | 93歳 |
ピンシャーの年齢計算式
ピンシャーは、2歳の時点で人間に換算すると23歳になり、3年目以降は1年に5歳分の歳を取ります。
計算式では下記の形になります。
ペットにする喜び、ジャーマン・ピンシャーを飼う魅力とは
1. 力強い美しさ
ジャーマン・ピンシャーの魅力は、力強い美しさです。筋肉質で引き締まった体は、美しく優雅でじつに堂々としています。
2. 優秀な家庭犬
ジャーマン・ピンシャーは、賢く優しい優秀な家庭犬です。
高い運動能力があり持久力と機敏性に優れています。
まとめ
ジャーマン・ピンシャーの性格の3大特徴は、活発、賢い、忍耐力。オスとメスでの性格の違いは、オスは甘えん坊で愛情深い傾向、メスは自立していて支配的な傾向。
ジャーマン・ピンシャーを飼う人に向いている3つのポイントは、活発で運動好き、リーダーシップがとれる人、小さな子供がいない人。
ジャーマン・ピンシャーのしつけの3つの重要ポイントは、一貫性、社会化、吠える。
ジャーマン・ピンシャーの飼育に関しての3つの注意点は、運動、他の動物に注意、寒さに弱い。
ジャーマン・ピンシャーの基本データ
英語表記 | German Pinscher |
---|---|
愛称 | ピンシャー |
原産国 | ドイツ |
サイズ | 中型犬 |
体高 | 45〜50cm |
体重 | 14〜20kg |
毛色 | ディアー・レッド、 レディッシュ・ブラウン、 ダーク・レッド・ブラウン、 ブラック&タン |
寿命 | 12〜14歳 |
価格 | 30〜50万円 |
参考文献
ジャーマン・ピンシャーに関連する記事
- 【犬種】ミニチュア・ピンシャーとは?性格の特徴と飼い方やしつけのコツ
- 【犬種】ドーベルマンとは?性格の特徴と飼い方やしつけのコツ
- 【犬種】スタンダード・シュナウザーとは?性格の特徴と飼い方やしつけのコツ