「犬でも虫歯になるの?」そんな疑問を持つ人もいるかと思います。たしかに昔は「犬は虫歯にならない」「歯磨きの必要がない」といわれていましたが、それもいまや都市伝説。犬の歯疾患のうち、5~6%を占めるのが犬の虫歯です。今回はそんな犬の虫歯の原因や症状、対処・治療法についてご紹介します。
犬が虫歯かどうかの2つのチェック項目
まずは犬が虫歯になっているかどうかの2つのチェック項目をご紹介します。
1. 口臭
本来、犬に口臭はありません。口が臭う場合は、虫歯を含め[ruby 口内 こうない]の病気の可能性があります。
2. 色
犬の歯はきれいな白が基本です。
しかし、あなたの家の犬が黄色や茶色、黒色をしているのなら、[ruby 歯垢 しこう]や[ruby 歯石 しせき]が[ruby 溜 た]まっている状態なので注意が必要です。
色が変わっている部分は虫歯によってもろくなり、穴があいてしまうのです。
犬の虫歯の3つの代表的症状
それでは次は虫歯の代表的な3つの症状をご紹介します。
1. 歯に穴があく
犬の虫歯には、歯の表面に小さなくぼみができる[ruby 小窩裂溝齲蝕 しょうかれっこううっしょく]、歯の横側にある平たい部分にできる[ruby 平割面齲蝕 ひらわりめんうっしょく]、歯の根っこにできる[ruby 後面齲蝕 こうめんうっしょく]の3種類あります。
2. 食事が遅くなる
犬も虫歯の痛みは人間と同じです。
食べ物や水が染みるため、食事を嫌がったり、食べるのが遅くなったりします。
3. 食事中に頭を振る
食事をしている最中に痛みを感じると、嫌がる声をだしたり頭を振ることがあります。
犬の虫歯の5大原因とは?
次は犬の虫歯について、大きく分けて5つの原因を紹介します。
1. 食事
もともと虫歯になりにくい犬に虫歯ができる原因の多くが、人間が食べるものを与えている場合です。とくに、甘い物や歯に詰まりやすい物を与えている場合は、犬のタメにもすぐに止めてください。
2. 歯磨きをしていない
ドッグフードを食べている現代の犬は、口内の汚れを除去しないと虫歯の原因である歯垢や歯石が溜まっていく一方になります。
3. 歯周病にかかっている
老犬であれば80%がかかっているといわれる歯周病。
歯周病で歯茎と歯の隙間ができてしまったりすると歯垢が溜まりやすくなるので汚れを落としにくく、虫歯にもつながります。
4. 歯が折れている
傷ついたり折れた歯の隙間から細菌が入ってしまうと、歯の神経が炎症して[ruby 歯髄炎 しずいえん]になり、そこから虫歯に発展してしまう事があります。
5. 小型犬
犬種によって虫歯になりやすいというのはないのですが、やはり口が小さく歯磨きがしにくい小型犬のほうが虫歯になりやすい傾向があります。
犬の虫歯への2つの対処方法
1. 病院へ連れていく
歯の病気に関して家庭内のケアだけではどうにもなりません。
また、自宅のケアで症状がよくなるということもありませんので、病院へ早めに連れていくようにしましょう。
2. 犬の虫歯治療できる病院を探す
じつは動物病院は全体的な治療を見るところであり、歯の病気について専門的知識や技術があるわけではありません。むしろ、きちんと虫歯治療できる動物病院は少ないのです。
ですから犬猫の歯科治療をできる病院か、事前にチェックしておきましょう。
犬の虫歯にすべき2つの検査方法
1. 歯科用レントゲン
通常のレントゲンの撮影よりも小さく撮影できるレントゲンで、顎骨、歯の形、歯根部分が重なることなく撮影できます。
それにより虫歯がどこまで進行しているのかチェックできます。
費用は平均4,000円ほどかかります。
2. 血液検査
歯を治療するためには、犬がじっとしていなくてはいけないため、基本的には全身麻酔をかけます。
ですから、麻酔をしても大丈夫かどうかを判断するために、先に血液検査を行います。
だいたい費用は3,000円ぐらいです。
犬の虫歯が続く場合にすべき3つの治療方法
1. 虫歯の部分を削って埋める
虫歯を削って埋めるのは初期段階に行われる治療です。
基本的には全身麻酔を含めるため、費用は30,000円ほどかかります。
全身麻酔をしない場合には10,000円以下になることもあります。
2. 神経を抜く
虫歯が表面だけでなく神経にまで届いているときには、歯の神経「[ruby 歯髄 しずい]」を除去します。
[ruby 抜髄治療 ばつずいちりょう]はとても高度な技術が要るため、費用も高く平均で50,000円ほどかかります。
3. 抜歯
虫歯の症状が重症化して、歯冠部が削られている場合には抜歯します。
1本5,000~10,000円の費用が掛かります。
犬の虫歯へ日常からできる5つの予防ポイント
1. 歯磨きを習慣化する
歯垢のもとになる菌膜が歯垢になるまでには24時間かかります。
つまり、歯垢になる前に歯磨きをすることで口内を清潔に保てるわけです。
なお、人間の歯磨き粉に入っているキシリトールは犬にとって有害なので、絶対に使わずにやわらかい布や歯ブラシで1日1回磨いてあげるとよいでしょう。
ちなみに、歯垢が2~3日経つと歯石になります。
2. 口移しをしない
人間の構内にある[ruby 虫歯菌 むしばきん]は、犬にも移ります。
ですから犬を虫歯にしたくないなら、犬にキスしたりするのも、できるだけやめましょう。
3. デンタルガムをあげる
あなたの犬が歯磨きが苦手であれば、デンタルグッズを使うのもポイントです。
たとえば、デンタルボーンやデンタルロープなどの硬すぎないもので遊ばせることで、唾液がたくさん出て口内をきれいにしてくれます。
4. 年に1回は病院へ
年に1回は病院に愛犬を連れて行って、歯と歯肉のチェックをレントゲンでしてもらいましょう。
5 .虫歯菌を減らす食事
犬の虫歯の原因である虫歯菌や歯周病菌を減らすことができれば、虫歯は予防できます。
子犬であれば人間からの口移しをしないことで虫歯菌の予防はできますが、すでに虫歯菌がいる場合は、毎日の歯磨きをつづけることで虫歯菌を減らしていきましょう。
ただ、犬によっては歯磨きを嫌がり、なかなか歯磨きができない犬もいます。そんな犬にオススメなのが、歯に汚れが残りにくいウェットタイプのドッグフードを与えることです。
上の図のようにドライフードはどうしても細かいカスが、歯と歯茎の間に残りやすく虫歯菌の増殖を助けてしまいます。とくに歯磨きを嫌がる犬の場合はそれが歯垢となり、歯石や虫歯の原因に。
しかし、ウェットフードであればしっとりしているので、こまかい粒になりにくく歯の隙間にカスが残ることがありません。
また水分量が多くやわらかいので、老犬や歯周炎の犬でも楽に食べられます。
EPAやDHAを含んだウェットフードを!
ウェットフードの中でもできればEPAやDHAを含んだドッグフードを選んでください。EPAやDHAは免疫力を高め、炎症を抑制する働きがあるからです。
EPAやDHAはイワシやサンマなどの青魚に多く含まれています。原材料にそういったものを選ぶと良いでしょう。
EPAやDHAが入ったウェットフードは少し価格が高くなりますが、愛犬が虫歯になりやすい場合はぜひ試してください。
きっと愛犬の歯の健康を取り戻せますよ。
今回のまとめ
犬の口の中の歯の色や口臭で虫歯かどうかをチェックしましょう。
虫歯になると、歯に穴があき、痛みから食事が遅くなることもあります。
犬が虫歯になる原因は、歯磨き不足や食事、歯周病になっているかどうかなどがあります。
犬の虫歯がわかったら専門病院を探し連れていきましょう。
虫歯の治療をするために血液検査と、レントゲンが必要です。
虫歯の治療は初期であれば患部を削り埋めるのですが、進行するにしたがって歯の神経を抜いたり、最終的には抜歯することがあります。
普段から歯磨きを習慣化して、愛犬を虫歯から守り予防しましょう。