犬が痙攣(けいれん)を起こした場合、いくつか原因があります。また痙攣といっても症状も様々で、大きな病気なのか、それとも心配いらないものなのか悩む飼い主さんも多いことでしょう。
今回はそんな疑問の多い犬の痙攣の原因・症状・対処方法についてご紹介します。
犬の痙攣(けいれん)の2つの種類と特徴とは?
まず痙攣について、痙攣とは「不随意に筋肉が激しく収縮することによって起こる発作」のことをいいます。
また痙攣にはいくつかのパターンがあります。
1. 全般発作と呼ばれる痙攣
全般発作の場合はほとんど意識はなく、激しい痙攣を意味しています。
全般発作は更にいくつかのパターンがあります。
・硬直痙攣(こうちょくけいれん)
硬直痙攣と呼ばれる痙攣は、突然意識を失い倒れ、体をのけ反らせるように突っ張ります。
このとき奇声を発することがあります。
・間代痙攣(かんたいけいれん)
間代痙攣と呼ばれる痙攣は、筋肉の緊張と弛緩を繰り返す痙攣をいいます。
四肢が縮んだり伸びたりを繰りかえしたりします。
・強直間代発作(きょうちょくかんたいほっさ)
強直間代発作と呼ばれる痙攣は、上記二つの痙攣が合わせて起こる発作のことをいいます。
硬直痙攣と間代痙攣が単独に起こる発作、2つの痙攣が合わせて起こる発作と大きくわけて3パターンあります。
またこれらの発作は2~3分ほどで収まることが多いですが、中には発作が収まる前に再び痙攣発作を繰り返してしまう場合があります。
こういった痙攣を重責発作と呼び、この発作は脳に深刻なダメージを与えときに命にかかわることもあります。
発作が10分以上続いている場合は、緊急処置が必要となります。
2. 部分発作と呼ばれる痙攣
意識が残っていて体が動かない、体の一部分が痙攣している。などの場合は部分発作と呼びます。
例えば、前足だけがピクッピクッと痙攣しているような状態です。
犬が痙攣をする3つの原因
1. 痙攣をおこす病気にかかっている
痙攣の原因の1つに痙攣を引きおこす病気が隠れていることがあります。
てんかんをはじめ、脳腫瘍、ジステンパーウイルス感染症などが考えられます。
頻繁に全般発作を起こす場合は病気を疑う必要があります。
2. 激しい運動のあとなどに筋肉が痙攣する
激しい運動をして筋肉を酷使すると痙攣が起こることがあります。
この場合は部分発作で犬の意識があり、足の筋肉などがピクピクと痙攣するのが特徴です。
このタイプの痙攣は一時的なものですから、まったく心配ありません。
3. 子犬の低血糖
身体の冷えや空腹、内臓障害による栄養吸収の悪化などが原因で、生後3か月までの子犬が低血糖により痙攣をおこすことがあります。
子犬は半日ほどの絶食で簡単に低血糖にってしまうので、より注意が必要です。
この場合は、至急、糖分補給をしてください。
ガムシロップや砂糖などを当分の多い食品を、指で口の中に塗ってあげて獣医に診てもらってください。
指で塗るのは誤飲防止の為です。
ただし、間違ってもチョコレートは絶対に食べさせないでください。
チョコレートは中毒症を起こし、最悪の場合、死んでしまうことがあるからです。
病気チェック!痙攣と一緒に現れる症状
1. 痙攣とくしゃみと発熱などが伴っている
痙攣だけでなく、くしゃみや発熱などをともなうことがあります。
この場合、犬ジステンパーウイルス感染症や犬クリプトコッカス症などが疑われます。
※犬ジステンパーウイルス感染症や犬クリプトコッカス症については、次の段の「犬の痙攣が続く場合に考えられる4種類の病気」にて少し説明しています。
2. 痙攣とともに首が傾いてしまう、ぐるぐる回ってしまうなどの症状が出ている
痙攣とともに、首が斜めに傾いてしまい、同じ場所をぐるぐると回ってしまうという症状があります。
この場合、脳腫瘍などが疑われます。
3. 痙攣を繰り返している
繰り返し繰り返し痙攣の発作が起こる場合、てんかんという病気が疑われます。
犬の痙攣が続く場合に考えられる4種類の病気
1. 犬ジステンパーウイルス感染症
犬ジステンパーウイルス感染症は、犬ジステンパーウイルスの感染により、鼻水やくしゃみ、咳、発熱、嘔吐下痢、そして痙攣をおこす病気です。予防ワクチンの摂取で防ぐことができます。
ワクチン未接種の子犬や免疫力が極端に低下した老犬が発症することがあり、急激に進行した場合には命にかかわることもある恐い病気です。
逆に健康な成犬の場合には発症しても、症状が軽く飼い主が気づかないまま治ることもあります。
2. 犬クリプトコッカス症
犬クリプトコッカス症になると、くしゃみや鼻水などの症状が見られるほか、鼻に潰瘍ができて腫れることもあります。
重い症状になると、肺炎を起こして呼吸困難を生じることもあり、眼や中枢神経へ感染すると、失明や痙攣、麻痺、運動障害などが見られることもあります。
3. てんかん・脳腫瘍・水頭症
犬が痙攣をくり返す場合、てんかんが疑われることがあります。
てんかんとは「脳が原因の痙攣をおもとする発作」のことです。てんかん発作には意識がなくなって倒れ痙攣するといった大きな発作から、体の一部がピクピクと震える程度の部分発作まで様々なものがあります。
てんかんは、検査をしても脳に構造的な異常が認められない原因不明の「特発性てんかん」と、脳腫瘍や水頭症、脳炎などの脳になんらかの病気があるために起こる「症候性てんかん」に分けられます。
「てんかん」について詳しくは、下記のページをご覧ください。
4. 門脈シャント
門脈シャントは先天的または後天的な原因によって、門脈と呼ばれる血管と大静脈との間に異常な路ができることで、アンモニアなどが解毒できずに身体で中毒を起こしてしまう病気です。
症状として、痙攣をおこしたり、食欲がなく、よだれが多いなどが現れます。
犬の痙攣への3つの対処方法
1. 痙攣の様子を観察する
痙攣は一部分のものですか?
全身が痙攣していますか?
どのくらいの時間続きましたか?
かわいいワンコが痙攣して心配なのはわかりますが、まずは痙攣の様子をしっかり観察してください。
どういった症状なのかの病気の診断にとても役にたちます。
犬が痙攣をおこすと慌てがちですが、落ち着いて観察しましょう。
この際まわりに危険なものがある場合は必ずどかしてください。
また、むやみに体に触れてはいけません、ケガにつながることがあります。
2. 犬の様子を観察する
犬の様子でいつもと違うところはありませんか、くしゃみをしていたり、元気がなかったりしていませんか?
痙攣の様子とともに、痙攣するまでの犬の様子をできるだけ思い出してください。
ちょっとした変化が病気の診断の手がかりとなります。
3. 動物病院を受診する
痙攣が収まったら、または痙攣が10分以上連続している場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。
全身の痙攣が長く続くと脳に障害が残ってしまう恐れがあります。
先ほど症状について詳しく紹介していますが、それを元に自己判断せず、必ず動物病院を受診しましょう。
その際、糞やおしっこ、これまでの通院記録などがあれば忘れずに持っていくようにしてください。
診察の手助けになります。
症状が続く場合にすべき検査方法
1. 血液検査
[ruby 痙攣 けいれん]が続くと全身に悪影響を及ぼすことがあります。そのため全身の状態をしるために全血球計算や生化学検査、血液ガス検査などを行います。
また感染症が疑われる場合、ウイルスの抗体価検査をしたりします。
状態によって選択される項目は違いますが、一般的に費用は10,000円ほどからです。
2. CT検査MRI検査
脳腫瘍などが疑われる場合にCT検査やMRI検査を行う場合があります。
CT検査は全身麻酔下で行われます。
費用は一般的に各30,000円ほどが多いようです。
症状が続く場合にすべき治療方法
痙攣の原因別に、治療方法をご紹介します。
1. 犬ジステンパーウイルス感染症が原因でおこる痙攣の治療方法
ウイルス性の病気のため、有効な治療薬はありません。
そのため、治療は輸液や抗生剤、抗けいれん薬などによる、支持療法や対症療法で治癒を図ります。
2. 犬クリプトコッカス症が原因でおこる痙攣の治療方法
クリプトコッカス症は真菌が原因で起こる病気です。そのため真菌に対する抗生剤を使用した治療を行います。また鼻炎や神経の異常にはそれにあわせて内科的な投薬治療をしていきます。
3. てんかん・脳腫瘍が原因でおこる痙攣の治療方法
てんかんは原因がわからないことが多いため、抗痙攣薬で痙攣を抑えます。脳腫瘍の場合は脳腫瘍を外科的に取り除く、または放射線治療や抗がん剤治療を行います。
4. 門脈シャントが原因でおこる痙攣の治療方法
先天性の門脈シャントの場合、外科手術により完治や延命治療が可能です。また肝臓保護作用のある食事を与えたり、薬剤による内科療法をおこないます。
日常生活からできる犬の痙攣への3つの予防習慣
1. ワクチン接種
犬ジステンパーウイルス感染症はワクチンで予防できる病気です。
年1回予防接種を受けましょう。
2. 飼育スペースを清潔に保つ
飼育環境を清潔に保つことは病気の予防につながります。
こまめに掃除をしましょう。
3. 健康診断を受ける
心臓の病気や、脳腫瘍など病気の早期発見のために、健康診断を受けるようにしましょう。
成犬の場合は、半年に1回。老犬の場合は、3ヶ月に1回くらいの定期検診が犬の健康のためには重要です。
今回のまとめ
犬の痙攣の2つの種類と特徴とは
犬が痙攣をする3大原因とは
病気チェック!痙攣と一緒に現れる3つの症状
犬の痙攣が続く場合に考えられる4種類の病気
犬の痙攣への3つの対処方法
症状が続く場合にすべき検査方法
症状が続く場合にすべき治療方法
間代痙攣日常生活からできる犬の痙攣への3つの予防習慣