犬の緑内障とは「眼圧が異常に高くなってしまう病気」です。眼圧が高くなってしまうことで、眼球後ろの視神経や網膜が圧迫され、その結果網膜や視神経に障害が出てしまいます。
最終的には、視力の低下、失明というケースも。今回は犬の緑内障の症状・原因・治療方法をお伝えします。
犬の緑内障の初期・中期・後期3つの症状とは
1.初期症状
緑内障にかかると、強い痛みが発生します。その痛みのために目をしょぼしょぼさせたり、元気なくうずくまったりという症状がでてきます。また瞳孔を見て、結膜炎や角膜浮腫、散瞳、充血、うっ血などの症状が出ていないかを確認します。
2.中期症状
最初の強い痛みが出る状態を通り過ぎると、痛みが麻痺し頭や目の奥が痛む状態に症状が進行していきます。この状態になると一時的に犬が元気になっているように見えることがありますが、緑内障が治ったわけではありません。
3.後期症状
眼圧の上昇が長期に続いた結果、最終的には失明してしまいます。この頃には牛眼という「眼が著しく腫大した状態」になっていることが多いです。なお、犬の緑内障は急性の傾向があり「発症後48時間以内に失明してしまう」ことも少なくありません。
犬の緑内障の2つの種類と特徴の違い
眼球の中を流れている房水という液体の流れが悪くなった結果、眼圧が高まることで発症する犬の緑内障ですが、隅角という「角膜の端にあり房水の流路である部分」の所見よって2つに分類する方法があります。
1.閉塞隅角緑内障
隅角が狭く、そのために虹彩根部で隅角を閉塞し房水排出が障害されて起こる緑内障を閉塞隅角緑内障と呼びます。犬の緑内障に多いこの型では、眼圧の上昇が急激であるため早期治療が必要となります。
2.開放隅角緑内障
隅角は広い状態であるにもかかわらず、その機能が十分ではなく、房水の排出が阻害されて起こる緑内障を開放隅角緑内障と呼びます。開放隅角緑内障の特徴として、初期には眼圧上昇が軽度であるものの、徐々に症状が進行し、閉塞隅角緑内障に進行してしまいます。
犬の緑内障の2大原因とは
1.先天性緑内障
犬には遺伝的に緑内障になり易い犬種が存在しており、そのために緑内障になるケースを先天性緑内障と呼びます。
・隅角が狭くなりやすい犬種
ノルウェジャンエルクハウンド、シベリアンハスキー、アラスカンマラミュート、秋田犬、サモエド
・隅角の発育不全が見られる犬種
スパニエル種、チャウチャウ、シャーペイ、トイプードル、マルチーズ、シーズー、トイ・プードル、アメリカン・コッカー・スパニエル
・水晶体の脱臼を起こしやすい犬種
ボストンテリア、ケアーンテリア、ウェストハイランドホワイトテリア、マンチェスターテリア、柴犬、ビーグル
2.続発性緑内障
他の眼疾患に続発して起こる緑内障を続発性緑内障と呼びます。続発性緑内障の原因となる疾患にはブドウ膜炎、水晶体脱臼、腫瘍などが挙げられます。これら病気によって、房水の流れがが阻害され、眼圧が上昇することで緑内障が発症します。
緑内障は、一般的に子犬よりも成犬に発生するケースが多く2歳から3歳を過ぎると発症が増える病気です。なお、オス・メスによる発症の度合いに有意な違いは判明していません。
犬の緑内障への2つの検査方法
いわゆる動物病院に連れて行き、検査を行います。できれば事前に眼圧計測機器がある動物病院を探しておくと安心です。
1.眼内圧の検査
緑内障の診断は、眼内圧が上昇しているかどうかを測定します。
機器により眼圧を計測し25mmHgから30mmHg以上かつ、視覚に何らか障害が見られた場合に、緑内障であると診断されます。
2.触診検査
機器がない場合には、犬の目を閉じさせ、まぶたの上から指で触ることで診断する方法もあります。この場合、緑内障が急性であれば犬は触られた目を痛がります。
検査費用は地域により異なりますが、初診料込みで数千円から一万円程度かかると見込んでおきましょう。
犬の緑内障への3つの治療方法
緑内障の症状は急速に進行するため、できるだけ近くの動物病院で治療を受けるべきです。そして、緑内障の治療方法には次のような物があります。
1.基礎疾患治療
続発性緑内障の場合、まず緑内障を引き起こしている基礎疾患の治療を施します。
2.投薬治療
先天性緑内障である場合や、明白に基礎疾患が発見されない場合、薬を投与することによって眼圧を正常範囲内に抑え込みます。プロスタグランジン関連薬、炭酸脱水酵素阻害薬、高浸透圧薬、ベータ遮断剤、コリン作動剤、交感神経興奮剤などが使われます。
3.外科手術
投薬などによって症状の改善が見られない場合には、外科手術を行います。外科手術では、強制的に眼房水の排出を促し眼圧を下げ視覚を維持します。また、治療を進めても症状が改善しない場合、もしくは既に完全に視覚が失われており、痛みが残っている場合には眼球の摘出を行うケースがあります。
なお、犬の緑内障手術は、一度だけではなく継続的に手術が必要な場合もありえます。更に、手術後も降圧剤の点眼を継続する必要がでてきます。治療費用は犬種や大きさによって異なってきますが、小型犬の場合で眼圧検査、レントゲン検査、二日間の入院まで考えると約15万円から20万円程度かかると見込んでおいてください。
治療後の予後とは
1.眼圧を下げる治療
犬の緑内障では、治療による視力回復は期待できません。治療の目的は、眼圧を下げて病気の進行を遅らせる事になります。月に1回から2回の定期検診を行う必要があります。また、片目だけ緑内障の治療をしても安心できません。
2.両目に発症しないよう予防
もう一方の目にも緑内障が発症する確率はに2年以内に約50%とも言われており、症状が出ていない方の目に対する予防措置も行っておく方が安心です。
犬の緑内障への予防習慣とは
犬の緑内障には、残念ながら体調管理などの飼育習慣的な予防方法はありません。重要なのは、早期発見・早期治療です。
定期的な検診を行い、少しでも目に異常を感じることがあったら、すぐに病院へ連れて行ってください。特に老犬を飼っている場合は、意識して目の様子を観察してあげてください。
今回のまとめ
犬の緑内障の初期・中期・後期3つの症状とは
犬の緑内障の2つの種類と特徴の違い
犬の緑内障の2大原因とは
犬の緑内障への2つの検査方法
犬の緑内障への3つの治療方法
治療後の予後とは
犬の緑内障への1つの予防習慣とは