「犬が突然倒れて痙攣をおこしている」こんな怖いことには遭遇したくないものですが、犬のてんかんは100頭に1頭の割合で起こるといわれています。
てんかんの発作が起きた場合冷静に対処することが重要です。今回は犬のてんかんの原因・症状・治療法をご紹介します。
犬のてんかんとは何か・てんかんの種類とは
1.てんかんとは
てんかんとは「脳が原因の痙攣をおもとする発作」のことです。
てんかん発作には意識がなくなって倒れ痙攣するといった大きな発作から、体の一部がピクピクと震える程度の部分発作まで様々なものがあります。
2.2種類のてんかんの
てんかんは、検査をしても脳に構造的な異常が認められない原因不明の「特発性てんかん」と、脳腫瘍や水頭症、脳炎などの脳になんらかの病気があるために起こる「症候性てんかん」に分けられます。
犬のてんかんの2つの症状!チェック項目とは
1.全般発作
全般発作の場合はほとんど意識はありません。この場合の発作は激しいけいれんを意味します。全般発作なかでもいくつかのパターンがあります。
・硬直痙攣
突然意識を失い倒れ、体をのけ反らせるように突っ張ります。このとき奇声を発することがあります。
・間代痙攣
筋肉の緊張と弛緩を繰り返すけいれんをいいます。四肢が縮んだり伸びたりを繰りかえしたりします。
・強直間代発作
この二つの痙攣が合わせて起こる発作のことを言います。
硬直痙攣と間代痙攣が単独に起こる発作、2つの痙攣が合わせて起こる発作と大きくわけて3パターンあります。
またこの発作は2~3分ほどで収まることが多いですが、中には発作が収まる前に再び痙攣発作を繰り返してしまう場合があります。これを重責発作と呼び、この発作は脳に深刻なダメージを与えときに命にかかわることもあります。
発作が10分以上続いている場合などは緊急処置が必要となります。
2.部分発作
意識が残っていて体が動かない、体の一部分が痙攣している。などの場合は部分発作と呼びます。
犬のてんかんの4大原因とは
てんかんは、脳を形成している神経細胞に異常がおこることによって発症します。考えられる原因をご紹介します。
1.脳腫瘍
脳に腫瘍ができる病気で脳腫瘍の最初の症状がてんかん発作であることがしばしばあります。
この病気はてんかん発作の他にも斜頸(頸が傾いてしまう)や旋回運動、運動失調、眼振(眼球が揺れ動くこと)といった症状が見られます。
2.水頭症
水頭症は頭の中に水が過剰にたまってしまい、脳室が異常に拡張した状態になってしまう病気のことを言います。
水頭症では痙攣発作、よく転ぶ、歩き方がおかしい、うまく立ち上がれない、目が飛び出しているように見えるなどの症状がみられます。
水頭症は先天性のものと後天性の原因のものがあり、先天性の水頭症では「ミニチュアダックスフンド」「チワワ」「ポメラニアン」「ヨークシャーテリア」「パグ」などが好発犬種であるといわれています。
3.ウイルス起因性
犬ジステンパーなどのウイルスに感染し脳炎を起こしてしまうことにより、脳になんらかの障害を受けそれがてんかんの原因となることがあります。
※1.2.3.はまとめて症候性てんかんといわれます。
4.特発性てんかん
検査をしても脳に構造的な異常が認められない原因不明のてんかんのことを「特発性てんかん」といいます。特発性てんかんには、好発犬種があることから遺伝的な要素が関係しているといわれています。
ドーベルマン、ボクサー、ブルドッグ、フレンチブルドッグ、シェットランドシープドッグなどが好発犬種と言われています。
犬のてんかんへの4つの対処方法
1.体をゆすったり、抑えたり、口の中へものをいれたりしない
発作を起こしている犬をゆすったり、抑えたりしてはいけません。発作を起こしている最中の犬の力は想像を上回る力です。
押さえつけたり、口の中にタオルなどを入れようとすることは、人が怪我をすることにつながります。発作中に舌を噛み切ってしまうということは、ほとんどありません。
2.危険なものが近くに無いか確認してあげる
犬がてんかんの発作を起こすと大半の方が慌ててしまうと思いますが、まずは落ち着いて犬の回りに危険なものがないか確認してあげましょう。
発作中は意識が無いことが多いため周りのものにぶつかったりして思わぬ怪我を招く恐れがあります。犬の回りにぶつかったり、落下してきたら危険そうなものがあれば速やかにどかしてあげましょう。
3.犬の様子をよく観察する
犬の様子を観察することがてんかんの治療にあたってとても重要になります。次のような点に気を付けて観察してください。
・発作を起こした時は何をしていましたか
・発作の始まりは体のどの部分からでしたか
・発作が始まるとどのように変化しましたか
・発作中犬の意識はありましたか
・発作が始まってからどれくらいの時間でおさまりましたか
・発作が落ち着いてから犬の様子はどうでしたか
・犬がいつもと同じ状態になるまでどれくらいの時間がかかりましたか
・発作の前いつもと違う行動をとっていませんでしたか
4.動物病院を受診する
痙攣がおさまったら、また重責発作だった場合は速やかに動物病院を受診しましょう。
重責発作は命にかかわる危険な状態です。10分以上痙攣がおさまらない場合は重責発作といって良いでしょう。治療が遅れると命が助かっても後遺症が残る場合があります。
痙攣がおさまったので病院を受診しなくても良いか、と自己判断するのは危険です。発作はまたいつ起きるかわからないのです。次起こる発作は単なる発作ではなく重責発作かもしれません。
犬の命を守ってあげるためにも動物病院を受診しましょう。
犬のてんかんへの2つの検査方法
てんかんを診断するための検査っというものはありません。てんかん以外の病気を除外するために様々な検査を行う必要があります。
てんかん以外の病気を除外することができて初めて「てんかん」いわゆる「特発性のてんかん」と診断することができます。
てんかん以外の発作の原因を特定するための検査は以下のものなどがあります。
1.CT検査・MRI検査
脳の断面図をみることで脳に目で確認できる異常があるかどうかを診断します。
CT・MRI検査は犬では動いてしまうと撮影ができないため、全身麻酔下で行います。そのため麻酔をかけても大丈夫な状態かどうか血液検査をします。
2.脳脊髄液検査
脳の中にある脳脊髄液という水を採取して、ウイルスなどに感染していないか、脳がどの程度損傷しているか、異常な細胞があるかどうかなどを調べます。
この検査も全身麻酔下で行います。
犬のてんかんへの2つの治療方法
てんかんの原因別に治療法方をご紹介いたします。
1.症候性てんかん
症候性てんかんは、脳に異常があったり、内科疾患などが原因で起こるためその原因である疾患を治療します。
・脳腫瘍
脳圧を下げる薬を使用し、抗がん剤治療や放射線治療などを行います。ときには外科的治療をおこなうこともあります。
・水頭症
脳脊髄液が溜まらないようにする降圧剤の投与、脳浮腫がみられる場合はステロイド剤などを使用して症状軽減を図ります。
・ウイルス起因性の脳炎
自己免疫力により自然に治ることもあります。抗てんかん薬をしようして発作をおさえます。
2.特発性てんかん
特発性のてんかんの治療の目標は生活の質の向上です。現在の医療ではてんかんは、発作を起こさない様に、起こしてもすぐ対処できるようにうまく付き合っていくしかありません。
薬物でてんかん発作を抑えるというのが主な治療になります。薬物では、フェノバルビタール、ゾニサミド、ジアゼパムなどが代表的です。
犬のてんかんへ日常からできる3つの予防ポイント
残念ながら現在の医療では、症候性のてんかんのウイルス感染からの脳炎に対して予防接種をしておく。という事以外確実に予防につながるものはありません。
しかし次のようなことを気を付けておくことで、発作が起きても冷静に対処してあげることができ、余計な怪我などを予防できます。
1.薬をしっかり服用し、定期的に動物病院を受診する
2.倒れても危険なものがないように犬がいるスペースに余計なものを置いておかない。
3.いざという時のために「ジアゼパム」などの座薬をもらっておく
今回のまとめ
犬のてんかんとは何か・てんかんの種類とは
犬のてんかんの2つの症状!チェック項目とは
犬のてんかんの4大原因とは
犬のてんかんへの4つの対処方法
犬のてんかんへの2つの検査方法
犬のてんかんへの2つの治療方法
犬のてんかんへ日常からできる3つの予防ポイント