人が美味しい食べ物は、犬も大好きです。
しかし、犬と人の体のつくりが違っていますから、よかれと思って与えたもので、愛犬が苦しんだり、ひどいときには命を失ってしまうこともあります。
今回はペット栄養管理士が犬に食べさせてはいけない物と、その「理由」や食べさせた場合「どうなるのか」を詳しくご紹介します。
自分の食べているものを愛犬にねだられると、つい食べさせたくなるものです。
しかし、人間が美味しいと感じる食べ物の多く(とくに加工品)は動物の犬に悪い影響を与えてしまいます。
お菓子や食べ残しをしまうときは、犬が引っ張り出せないようしっかり管理しましょう。
犬に絶対食べさせてはいけない食べ物
1.ネギ類
タマネギ、長ネギ、ワケギ、アサツキ、ニンニク、ニラ、ラッキョウなどのネギ類は犬に食べさせてはいけません。
○なぜいけないのか
ネギ類に含まれる成分、「アリルプロピルジスルフィド」は犬の赤血球のヘモグロビンを破壊します。
食べさせた量によっては血液に異常が起きて溶血性貧血を引き起こしてしまいます。
○食べさせるとどうなるのか
急に元気がなくなってフラフラします。
嘔吐、下痢が始まり、回復に向かわないときは血尿と黄疸症状が見られるようになり、症状が重くなると痙攣(けいれん)を起こして死亡することがあります。
体重10kgの犬にとって200gのタマネギを食べるのは致死量に値します。
ハンバーグに入っていたタマネギで中毒を起こす子もいるので、少量でも犬にネギ類は御法度です。
2.チョコレート
チョコレートだけではなくカカオを使った食品全部がNG。
犬にはチョコレートを食べさせてはいけません。
○なぜいけないのか
カカオの成分。「デオブロミン」が犬に中毒を起こさせます。
体重10kgの犬がミルクチョコレートの板チョコ(100g)を5〜10枚食べると致死量のデオブロミンを摂ることになります。
○食べさせるとどうなるのか
下痢や嘔吐、興奮状態になる子もいます。
ひどくなると呼吸困難、不整脈、痙攣から麻痺と症状が進み、死に至ることもあります。
3.キシリトール
ガムやタブレットに含まれているキシリトールも犬には危険な食べ物です。
◯なぜいけないのか
キシリトールを犬が摂取すると、大量のインシュリンが放出されて危険です。
◯食べさせるとどうなるのか
キシリトールを食べさせた場合、低血糖や肝障害、痙攣、発作などを起こします。
誤って食べさせないためにも、キシリトールの商品はあまり購入しないほうがよいでしょう。
4.生食用じゃない生肉
生食用ではない生肉も食べさせてはいけません。
祖先が狼だから生肉なら何でも食べるし健康に良われるかもしれませんが、現在の犬は胃酸の量が減っており生肉により食あたりを起こすことも珍しくありません。
とくに寄生虫などの可能性がある豚の生肉は要注意。
また、生食用の生肉でも、まずは少量づつ様子をみながら与えるようにしましょう。
○なぜいけないのか
生の豚肉は有鉤条虫やトキソプラズマといった寄生虫を持っていることがあります。サルモネラ菌感染の危険性もあります。
○食べさせるとどうなるのか
有鉤条虫は目や脳に寄生して障害を引き起こします。
サルモネラ菌は食中毒の原因です。人に感染することもあります。
5.ブドウ
ブドウ、干しぶどうなども犬には食べさせてはいけない食べ物です。
○なぜいけないのか
干しぶどうによる犬の中毒がアメリカで1年間に140件起き、その内50件は重篤で7件の犬が死亡したという報告があります。
ただ、ブドウのどんな成分がトリガーになったのかは究明されていません。
○食べさせるとどうなるのか
レーズンパンを食べたくらいの少量であれば問題ありませんが、大量に摂取すると嘔吐と下痢が激しくなり、腎不全を起こします。
腎不全は重症化すると死に至る怖い病気です。
6.鳥の骨
唐揚げやモモ焼きなどの骨は食べさせないようにしましょう。
ただし、軟骨は大丈夫です。
○なぜいけないのか
牛や豚の骨はアゴの力が強い犬でも一気にかみ砕くことができません。これらの骨は徐々に削るようにして食べるので問題ないのですが、鳥の骨は柔らかいため一噛みで砕けます。
砕けた鳥の骨はひとつひとつが鋭くなって、喉や内臓に刺さることがあります。
○食べさせるとどうなるのか
異物が内臓に刺さればそれだけで立派な病気です。
骨の破片がひっかかって窒息や腸閉塞の原因になります。
7.その他の食べ物
以外に思うかもしれませんが、牛乳も犬によっては分解する酵素・ラクターゼを持っていない子もいるので、お腹を壊す場合があります。それはチーズやヨーグルトといった乳製品も一緒です。
イカやタコ、エビ、コンニャクなどの消化に悪いものも避けましょう。
また、アルコール類も体の中で分解できないため、絶対与えてはいけません。
人用の薬を飲んでしまったときは、同じ薬を持ってすぐに病院に駆けつけましょう。
犬に与えない方がいい食べ物
続いて与えないほうが良い食べ物を紹介します。
これらの食品は絶対的な害はないので、1ヶ月に1度くらいの頻度であれば多くの場合、食べさせても問題ありません。ただ、合わない犬も多いので
1.ナッツ類(特にマカダミアナッツ)
○なぜいけないのか
犬によっては中毒症状を起こすことがあります。食べさせる必要のないものは与えないようにしましょう。
○食べさせるとどうなるのか
元気がなくなる、吐く、熱が出る、ブルブルと震えたり、痙攣を起こすこともあります。
2.スルメ(イカをカリカリに干したスルメ)
○なぜいけないのか
スルメを戻すとわかりますが、ビックリするほど大きく膨れ上がります。元の10倍以上の体積になるといわれています。
犬は大きなかけらを丸呑みするので、お腹の中でスルメが大きくなりすぎれば、吐き出すことも消化することもできません。
○食べさせるとどうなるのか
大量に食べれば、膨れ上がったスルメが胃の内壁を傷つけたり、腸閉塞を起こします。消化しきれなくて便秘状態が続くようなら、手術で取り出すこともあります。
3.アボカド(日本で市販されている「グアテマラ種」は特に注意が必要)
○なぜいけないのか
「アボカドは健康にいい」という理由で輸入物のアボカド配合ドッグフードも出回っています。しかし、近年、アボカドに含まれるペルジンという成分が犬に中毒を起こさせることがわかってきました。
「アボカドに害はない」という意見もありますが、それはアボカドの品種によってペルジンの含まれている量が違うせいです。
ペルジンの少ない品種を食べている地域では犬の中毒がほとんど起こらないためそう言われるのです。
日本で主に市販されている「グアテマラ種」はペルジンを大量に含んでいます。
犬の健康にはよくないことがある、という報告がある以上、与えない方がいいでしょう。
○食べさせるとどうなるのか
嘔吐や下痢を起こします。
症状がひどくなり、脱水状態になると命にかかわります。
4.キャットフード(猫用のドライフードや猫缶)
○なぜいけないのか
キャットフードは脂質が非常に多いので要注意です。
○食べさせるとどうなるのか
犬と猫では必要な栄養素も食べ物を消化吸収する構造も違います。
キャットフードは犬にとっては肥満の原因となります。
5.お菓子やせんべい、珍味系のおつまみ、練り物(カマボコ、さつま揚げ)などの加工品
○なぜいけないのか
人の舌に合わせた加工品は塩分、脂質、糖分が多すぎます。
保存料や添加物も問題です。
○食べさせるとどうなるのか
犬の食べるものに味付け(添加物)は不要で害になるばかりです。
また、わざわざ食欲を湧かせるような添加物をいれる必要もありません。
こういったものを与え続ければ病気の原因になるだけです。
まとめ
チョコレートを大量に与える飼い主はいませんが、ミルクチョコレートなどは犬の好物なので、しまったものを引っ張り出して食べてしまうことはあります。
体重の軽い小型犬だと板チョコ数枚でもデオプロミンが致死量に達するので油断はできません。
犬の具合が急におかしくなってきたときは、なにか食べてはいけないものを口にした可能性を疑ってみてください。
嘔吐物の中にそれらを見つけたときは、はやめに獣医に診せましょう。
また、人間用に処方された薬や漂白剤など、危険物を飲んでしまったときも一刻も早く医師に相談してください。