近年、ペットショップの小動物コーナーでもよく見かけるようになったシマリス。
とは言っても飼育書なども少なく、ペットにするにはまだまだ敬遠されがちですが、習性や飼い方をしっかりと理解してあげれば飼育はそんなに難しくありません。
今回はシマリスの知られざる生態や飼育方法をご紹介します。
シマリスの紹介
1.生息地
ロシア全域・アジア北東部(カザフスタン・モンゴル北部・中国東北部・北海道)北アメリカなどに幅広く分布
2.平均体長
13cm~19cm(尾の長さは8cm~12cm)で、平均体重50~120gとなります。
3.名前のルーツ
背中から尾の付け根にかけて黒色や黒褐色の5本の縦縞と白っぽい4本の縦縞がある事からこの名前で呼ばれるようになったと言われています。
4.簡潔な歴史
ペットとしての歴史は意外にも古く、古代ローマ時代にはすでに捕獲され飼育されていた歴史があり、日本でも江戸時代には大陸から愛玩用に輸入されていたという情報もあります。
また、ヨーロッパでは毛皮用に乱獲された少し悲しい過去もあるようです。
5.平均寿命
6~10年ほど
シマリスの種類と特徴
一括りにシマリスと言ってもその種類は25種類ほど存在し、北海道だけに生息するエゾシマリスや北米大陸に生息するアカミミシマリス、チビシマリスなどがいます。
日本のペットショップで見かけるシマリスはほとんどが中国から輸入された「チュウゴクシマリス」という種類です。
今回は一般的に飼育されているチュウゴクシマリスとチョウセンシマリスの特徴を載せています。
1.チュウゴクシマリス
現在、日本のペットショップで販売されているシマリスの中で最も多い種類。他の野生種や亜種よりも比較的大きく丈夫なのが特徴です。
ペット用としてブリーディング(繁殖し育てられている)されている為、懐きやすく警戒心も少ないようです。
2.チョウセンシマリス
名前の通り朝鮮半島(主に韓国)から輸入されていたシマリスですが、現在は韓国での輸出が禁止されている為、日本で繁殖されたものがペットショップで販売されることがあります。
チュウゴクシマリスより小柄で体毛の色が濃くはっきりとしているのが特徴です。警戒心の高い個体が多く、飼い主に懐くのに時間がかかる場合があります。
シマリスの飼育に適している人の4つの特徴
1.電気代を気にせず、室内環境に注意できる人
ちょっとおかしなタイトルですが、シマリスなどの小動物はケージの中で飼育するため室内犬や猫のように家の中を自由に移動できません。
暑ければ涼しい場所へ、寒ければ暖かい場所へと自ら動くことが出来ないので季節に関係なく部屋の温度を一定に保ってあげる必要があります。
部屋の温度を一定に保つにはやはりエアコンが欠かせません。直接風の当たらないように注意して22℃~25℃くらいに設定してあげるのが良いでしょう。
特に日本のジメジメした梅雨時や夏の暑さには弱いです。1年を通してシマリスが快適な室温にしてあげられるようにしましょう。
2.過度なスキンシップをしない人
小動物の中でも比較的懐きやすいと言われているシマリスですが、それでもやはり体を触られすぎたり、人間が構いすぎるとストレスを感じます。
リスのようなネズミ目に属する動物は食物連鎖のヒエラルキーでいうほぼ最下層に位置します。外敵が多いのを本能的に知っている彼らは、体や毛に自分以外のにおいが付くのをとても嫌がるのです。
日常のスキンシップは餌をあげる時や小屋の掃除をする時だけにし、できる限り控えましょう。
3.綺麗好きな人
シマリス自体、体臭などほとんどありませんが餌である穀物の殻をボロボロ落としたり、オシッコや糞の混ざった匂いで小屋はどうしても匂ったり汚れがちです。
最低でも日に1~2回掃除をしてあげてください。ちなみに上手に飼えばトイレはちゃんと覚えてくれる子が多いです。
また、早く懐いてもらえるようにするために小屋から出して部屋の中を散歩させる方法もあります。その場合、シマリスにとって危なくないように家(部屋)の中を日頃から片付けておくことが必要です。
4.突然凶暴になっても動揺したり怖がらない人
飼い主の肩に乗ったり手から直接餌を食べてくれたりと、とても愛くるしい行動を見せてくれるシマリスですが1年に1度の一定期間、秋口から冬にかけては突然凶暴になる事があります。
別名「タイガー期」なんて呼ばれたりもします。
その理由ですが一説に、冬の餌不足に備えて餌を蓄える習性があるため「他のシマリスは邪魔だから、争って自分以外の生き物を排除したい」という本能が働くからだと考えられています。
こういった習性は仕方のない事です。いくらシマリスに「あなたはペットなのだから餌不足になるなんてありえないよ。」と説いても理解はできません。
餌不足は野生動物の死活問題ですし、自己防衛のため攻撃的になるのは自然の摂理と捉えましょう。大切なのはそんなペットの姿に動揺せず、広い心で飼い主が受け入れてあげる事です。
ましてやそこで飼育を放棄するなどあってはなりません。要は、溜め込んだ餌を極力捨てたりせずにそっと放っておいてあげれば良いだけです。
ちなみに春に近づけばまた穏やかな性格に戻るのであまり心配しないようにしましょう。
シマリスを飼育する場合の初期費用と入手方法
野生のシマリスを捕獲・飼育するのは法律で禁止されている為、入手方法はやはりペットショップということになります。
なるべくシマリスなど小動物に詳しい店員さんがいて何かあったら気軽に相談できるようなペットショップで選びましょう。
一般的な生体の価格は1万円前後です。命なので決して値段で選びたくはないですが、犬や猫に比べるとそこまで高価ではないのも最近人気な秘訣なのかもしれません。
また、シマリスは大人(生後約半年~1年)の生体に限ってはほぼ1年中入手可能ですが、春のみ生後約1ヶ月~3ヶ月のベビー生体も売られています。
どこのペットショップでもベビー生体の方が価格的に割高になる傾向が多いでしょう。
生体以外にかかる初期費用としては、ケージや餌(エサ)ウッドチップなどですが合わせて約30,000円前後と考えると良いと思います。
飼育のために具体的に必要なグッズは下記の項目で説明します。
シマリスの飼育に必要な9つのグッズ
1.ケージ:6,000円~10,000円程度
シマリスは木登りが得意で上下に活発に動き回る習性があるので、ケージもある程度の高さがあるものが必要です。リスや子ザル・小鳥用として販売されている金網タイプのケージを利用するのがごく一般的です。
2.巣箱:1,000円~2,000円程度
こちらはリス用に売られている場合が多いです。餌を貯蔵したり、中で眠ったりと大事な役目を果たすため、広さ高さともに十分なものを選んでください。一時期は木製のものが主流でしたが、長時間放置した餌がカビたり腐ったりする可能性もあり、プラスチック製の物も多く出回っています。
3.餌(エサ):500円~1000円程度
野生のシマリスはドングリや木の実、花(種子)、果実など植物性の餌を好んで食べています。ですので、それになるべく近い餌をバランスよく与えてあげたいところです。
リス用のペレット(配合飼料)も良いのですが、シマリス用に調合されているのか怪しいところで栄養過多になる恐れもあります。
そういった点から、実はハトの餌(トウモロコシ・麻の実・ヒエ・アワ・大麦・小麦・そばの実など)が非常に適していると言えます。
他に、副食としてひまわりの種やくるみ、りんごやブドウなどの果物を与えると良いでしょう。
4.エサ入れ:100円~500円程度
あまり大きすぎてもシマリスが直接エサ入れに入ってしまい汚れやすくなるので適度なものを選びましょう。プラスチック製の軽いものだとひっくり返してしまう可能性もあるので、陶器製で少し重みがあるものがお勧めです。
5.給水ボトル:500円程度
シマリスはあまり水分を必要としませんが、それでも新鮮な水をいつでも飲めるようにしてあげる必要があります。ペットショップなどにボトルタイプで飲み口が細くなっているものが売っています。
稀に、皿型の水入れを用意してそこに水を入れておく人もいますが、糞などが入ってしまうと衛生的にも良くないのでボトルタイプを選ぶようにしましょう。
6.ウッドチップ(床材):500円~1000円程度
ケージの床に敷き詰めます。汚れ防止などの役割もあるのですが、寒い時などはシマリスが巣箱に持ち帰りこれで寝床を作ります。針葉樹か広葉樹のおがくずタイプのものが使い勝手が良いです。
また、ウッドチップを敷く前に新聞紙などをあらかじめ敷いておくと良いです。汚れたら新聞紙ごと丸めてそのまま捨てられますし、新聞紙のインクは大豆インクなど天然の素材を使っているので万が一誤飲してしまっても安全です。
7.トイレ:500円程度
ハムスターなど小動物用のコーナートイレというものがペットショップで販売されていると思います。
シマリスは100%トイレを覚えるとは言えませんが、安全で落ち着くケージの隅にトイレを設けてあげると覚えてくれる子が多いです。トイレには固まるタイプのトイレ砂を入れておくと排泄したのかどうか分かりやすくて良いですが、床材と同じウッドチップでも構いません。
8.回し車:1000円~2000円
元気なシマリスには欠かせない運動器具です。
毎日の散歩(部屋の中で)を習慣化しているとあまり回す姿を見掛けないかもしれませんが、そうでなければ必ず用意してあげたいグッズです。体格に合わせた大きさの物を選びましょう。
9.止まり木:0円~
野生のシマリスは生活のほとんどを木の上で過ごしています。木の枝から枝へ颯爽と駆け回っている姿を動物園などで目にした方も多いと思います。
より自然に近づけてあげられるように止まり木はあると良いでしょう。木の枝といっても色々と種類がありますが一般的にはヤナギやクヌギ、ケヤキなどです。
公園などで拾ってきて、十分に熱湯などで消毒し乾かしたものをケージの中にうまく吊るしてあげましょう。
シマリスの餌の主な種類と正しい与え方
1.ハト用の餌(ミックスフード)
先ほども少し触れましたが、主に穀物をメインに食べるシマリスにとって様々な植物性の食べ物が入ったハト用の餌は嗜好性も高く栄養バランスも良いと理にかなっています。(逆にリス用として売られているペレットはシマリスには栄養過多になる場合があります。)
中には、脂質の高いナッツ類ばかり入っているミックスフードもあるので内容物や成分表にも注意して購入しましょう。
2.ひまわりの種・くるみ・野菜・果物類
上記は副菜として5g~10g程度を目安に与えると良いです。野菜はにんじん・小松菜・サツマイモなど、果物はりんごやブドウ、いちごなどです。
ひまわりの種とくるみは殻つきのまま与えて大丈夫です。誰に教えられるわけでもないのに器用に殻(皮)を剥いて食べます。
餌の与え方:餌は基本的に1日1回で主食副菜合わせて30~50gを目安に与えます。シマリスは他のネズミ目と同じように夜行性かと思いきや、実は午前中から夕方にかけて活動する昼行性のため、餌も午前中の出来るだけ早い時間(8時~10時くらい)に与えてください。
与えた餌は一度に全部は食べずいくらかを巣箱やケージの隅に溜め込みます。溜め込んでいるからと言って少なくはせず毎日一定量を与えるようにしましょう。水分の多い野菜や果物を溜め込む場合は腐りやすいため隙を見て新しいものに交換するか捨てましょう。
シマリスに多い3種類の病気
1.不正咬合(ふせいこうごう)
切歯(前歯)が発達しているネズミ目に多い病気の一つです。
シマリスの歯は死ぬまで伸び続けます。通常、固いものを上下の歯でこすり合わせることで少しずつ削れて伸びすぎるのを防いでいるのですが、柔らかい餌や一口で飲み込んでしまうような小さいものばかり与えてしまうと切歯が伸びすぎてしまいそれによってうまく餌を食べられなくなってしまいます。
(人間でいうところの噛み合わせが悪く歯が脆くなる事)伸びすぎた歯は獣医さんにカットしてもらわなければならず、シマリスにとっても大変なストレスです。
日頃から固い餌やかじり木などを与えて予防しましょう。
2.脱毛症(皮膚病)
毛が抜け落ちたり、毛が剥げて丸見えになった皮膚から細菌に感染し皮膚病になったりします。
多くが強いストレスが原因とされているので、シマリスにとって負担になるような扱い方は避け、伸び伸びと生活できるようにしてあげましょう。
3.下痢
原因として疑うべきはまず餌です。水分の多い餌や傷んだものを食べることで起こります。
普段食べ慣れないものを食べて発症する場合もあります。他にはウイルス感染や寄生虫なども考えられます。下痢と聞くとそこまで大したことのないような気がしますが、シマリスのような小動物では悪化すれば最悪の場合死に至る恐れもあるほど致命的な病気です。
糞の固さや匂いにも気を配り、少しでもおかしいなと感じたら獣医さんに相談しましょう。
シマリスの飼育で注意する3つのこと
1.脱走
好奇心旺盛で頭の良いシマリスはちょっとの隙間があれば簡単にケージから抜け出し、窓の網戸なども簡単に破って外へ逃げてしまいます。1度逃げてしまったシマリスを見つけて捕まえるのはほぼ不可能です。
部屋での散歩やケージの掃除などを行う際は特に注意しましょう。
2.怪我(ケガ)
かわいい家族であるシマリスのケガに注意したいのはもちろんですが、シマリス起因で起こる飼い主自身のケガも是非注意したいところです。
特にお伝えした秋口から冬にかけてのタイガー期は、普段おとなしい子もそれなりに豹変します。
血が出るほど指を噛まれたり、顔を引っ掻かれたり、大ケガといかないまでも痛いですし、初めての時は何よりショックが大きいものです。
「気が荒くなったかなぁ・・」と思ったら必要以上に構わないこともシマリス飼育では大事です。
3.冬眠
野生のシマリスは寒くなってくると冬眠に入ります。
ペットとして飼育されているシマリスは1年を通して室温が一定のはずなので、余程の事では冬眠しないと言われていますが、あまりに部屋が寒かったり冬場の餌が少ないなど条件が重なると野生のそれと同じように冬眠してしまうことがあります。
脂肪を体に蓄えて熊のように何ヶ月も巣の中でじっとする冬眠ではなく、10日に1度程度トイレや餌を回収する為に起きたりするので半冬眠とも表現できるかもしれません。
それでも、巣の中で眠っている時間が長いため起きている姿を見掛けることはほとんどなくなってしまいます。
冬眠中も十分な餌と水があり飼育環境が良ければ決して悪い事ではないのですが、飼い主にとっては何ヶ月もほぼ会えないとなると寂しい限りだと思います。
また、冬眠から目覚める春はとても大きなエネルギーを使うため急に体調を崩してしまう恐れもあるので、なるべく1年中快適な環境で過ごせるよう注意したいところです。
シマリスを飼育する2つの魅力とは
1.とても懐いてくれる
シマリスは人間のペットとしての歴史も古いせいか、愛情をかけて育てれば育てるだけ飼い主によく懐いてくれます。
賢い子も多く、名前を呼んだら自分から寄ってきたり顔を近づけると優しくキスしてくれる子もいるほどです。
その愛くるしい姿は、さすが数々のマスコットキャラクターに採用されるだけあります。(本物はもっとかわいいですね。)
2.身近な野生動物としての存在
人懐っこいシマリスですが、ケージの中での彼らの行動は「あぁ、やはり野生動物なんだな。」とあらためて再認識させてくれます。
餌を頬袋にパンパンに詰め込み巣の中に必死に溜め込んだり、すばやく止まり木を駆けのぼったりとその野性味を色濃く残した一つ一つの行動に飼い主は好奇心をそそられます。
犬や猫とはまた違う面白みを持ったエキゾチックアニマル(野生に近い動物・珍しい動物の総称)を代表するような存在なのです。
今回のまとめ
シマリスの紹介
シマリスの2つの種類と特徴
シマリスの飼育に適している人の3つの特徴
シマリスを飼育する場合の初期費用と入手方法
シマリスの飼育に必要な9つのグッズ
シマリスの餌の主な種類と正しい与え方
シマリスに多い3種類の病気
シマリスの飼育で注意する3つのこと
シマリスを飼育する2つの魅力とは